向かいのお兄さん
第38章 不器用なあんた
「俺、美咲がつらい思いすんのも、悲しい思いすんのも、嫌だから」
『…』
「職場でもプライベートでも由紀の目が光ってたから、全然、美咲に言えなかった」
『動画…とか…どうでもいいよ!!』
息を荒げながら
あたしは直也の体を叩いた
『あたしは…直也に無視されたことがつらかった…直也に突き放されたことが、悲しかった…!!
そういうとこ…ちゃんと、考えてょ…』
ついには
やっぱり
泣いてしまった
「そりゃーたまげた」
わざとらしく目を開き
直也はあたしの頬を撫でる
「でも…嬉しい」
軽く唇が重なり合うと
あたしは完全に崩れた
ひとりじゃ立つこともできなくて
体を支えてくれる手を頼りに
直也の胸にうずくまって
泣いた