向かいのお兄さん
第39章 元通り
「さーな」
『…』
曇ったあたしの顔を見て、直也は笑った
「何でそんなこと聞くの?」
『…何となく』
「じゃあ、美咲は俺のことどう思ってる?」
投げ返された
ただ"好き"で片付けてしまうのは
嫌だった
『さーね』
「ずるっ」
『直也の真似しただけだもん』
少し得意げになって顔を上げると、直也はあたしの頭を撫でた
「お利口になったな、このお猿さんも」
『だれが猿だぁああ!!』
信じようと思った
「ほら爪立ててる!!
いたたたたた!!」
『うっさぃなぁ!!』
人から何を言われようと
人から何を聞かされようと
あたしは
あたしと正面から向かい合ってくれる直也の口から出た言葉だけを
信じようと思った