向かいのお兄さん
第53章 崩れ
どうしてもどうしても
不安と心配を取り去ることが出来ずにいた
一日眠ってしまえば、大丈夫
とか思ったけど
朝起きたって
何も変わってなかった
『…』
でも、決めてたの
今日は直也が仕事終わったときに
"はいっ"
って渡すの
うたぐった顔しながら袋を開けて
ちょっと口の端を持ち上げて
"ありがとう"
って
言ってくれる
って
思ってた
けど…
『直也っ』
仕事が終わった時間は
いつもよりも、遅い時間
造花店はちょうどシャッターを下ろしてしまったところで
寒そうにしながら扉から出てくる直也を見つけて
あたしは駆けていった