向かいのお兄さん
第53章 崩れ
『…どぅしたんですか…?』
あたしは目を合わせずに
雅也さんに尋ねた
「え、ああ…昨日さ、本を一冊持って帰り忘れたから…」
『…それなら、机の上に置いてありますから…持って帰ってくださぃ…』
あたしはそう言い終えると
袋のリボンをほどいた
「…何してんの?」
まだ形を保っていた部分に向かって、大きく口を開ける
「ちょっ、おいおい!!」
雅也さんはあたしからお菓子を取り上げると
そのままそれを、あたしから離した
「何で食おうとしてんだよ?」
『返して下さぃ…』
「言え。
何で美咲ちゃんが食おうとしてんだ?」
『返して…下さい』
「これはあいつにやる物じゃないの?」
『返…し…』
あたしは
雅也さんの体を叩いた