向かいのお兄さん
第57章 共に歩んで
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「美咲ー」
『何?』
俯せに寝転んでいた直也は、あたしの耳元に顔を近づけた
「美咲はどんな花が好き?」
軽く唇が耳たぶに触れて、くすぐったい
『花とか、あんまり詳しくないもん』
「じゃあ、何色の花が好き?」
『何でもいいー』
あたしは横向きになって
直也に背中を見せた
「何でもとかずりーじゃん」
直也の拗ねた顔が簡単に想像できる
『あ、でもね…』
振り向くと、やっぱり不機嫌そうな直也の顔があった
『あの花が好き』
「どの花?」
『あのーあれだよ、何かまるっこいヤツ』
直也の眉間にしわが寄った
まあ確かに、こんな説明じゃ伝わらないよね
『ほらほら、吊るしたランプみたいなのがいっぱい付いてるヤツ』
「…」
『"なんとかスズ"って言うヤツだって』
「…スズラン?」
『あ、そう、それ!!』
すごくすっきりしたから、思わず直也の頭を撫でた
直也はというと、ちょっと口元を持ち上げただけだった