向かいのお兄さん
第57章 共に歩んで
「ーーーところで…あなたの名前は?」
やっとのことだった
話のネタが尽きたわけでもなかったけれど、それでも会話に一区切りついたとき
女性はあたしに名前を尋ねてきた
『あたし…美咲っていいます』
「美咲さん、へえーあなたによく合ってるわ」
白髪交じりのこの人は
まるで子供のように無邪気な笑顔を向けてきた
「美咲さん、美咲さん…
ああ、いい名前ね。本当にいい名前」
心から褒めてくれるものだから、あたしは照れ臭くなって
ついつい視線を遠くへ持って行ってしまった
『あの…あたしも…失礼ですけど、お名前を聞いてもいいですか?』
「ええ、もちろんよ」
女性の口が
私はー
と開きかけたときだった
「何してんだクソババア!!」
怒鳴り声が
一気にその和やかな空気を乱した