
刑事とJK
第97章 根城の裏で笑う者
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斉藤と嘉山が再び現場に戻ってくると、一人の男が立っていた。
「?」
男は斉藤たちの気配に気づくと、振り向いて笑顔を向ける。
「どうも」
「平尾さんじゃないっすか、どうしたんすか?」
斉藤が尋ねると、平尾という男は視線を落とした。
「いや…何でもないよ。
遠藤が死んで…寂しくなったなって思って」
持ち上がった顔は悲しんでいるのかと思いきや、どこか笑っているように見えた。
平尾は続いて、嘉山に目を移す。
「…君が第一発見者の嘉山君だっけ?」
「…はい」
「…そうかい」
平尾は整った顔立ちをしていた。
まだ年も若いというのに、実力も認められるような一人前の刑事であった。
それゆえ、彼の言葉はどこかに重みがある。
「何でも、遺体を発見したあと逃げたそうじゃないか」
「…っ」
馬鹿にされた…と言うよりかは、呆れられた。
平尾の目がそう訴えていたのだ。
「情けないこと、この上ないね」
嘉山はギュッと下唇を噛んだ。
ありありと見せる悔しさに、平尾は微笑を漏らす。
「何だそれ、いじけてる時間があったらちゃんと仕事したら?」
「ぼ…僕は…」
「まだ半人前だからなんて言い訳は吐くなよ?
殴ってやりなくなるくらい面倒だ」
「平尾さん、でもこいつは確かに半人前だ。
あんまり言わねぇでやってください」
斉藤が間に割り込むと、平尾は今度は苦笑した。
「斉藤が言うなら、仕方ないね」
「…すんません」
「いいや、こっちこそ捜査の邪魔して悪かったよ」
斉藤の肩を叩き、平尾は部屋を出ていく。
嘉山はその背中を、じっと見ていた。
