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刑事とJK

第97章 根城の裏で笑う者





「そ…そう言われてみれば、確かに…」




あの出血量だ。


殴った瞬間に一滴も血が飛び散らないとは考えづらい。





「じゃあ、この大量の血の下に隠れてしまってるとか」




「それも…考えづれぇ」



遺体の頭部は、壁につくかつかないかギリギリの位置にある。



その壁ギリギリの場所で殴られたのなら、確かに大量の血の下に隠れてしまったという説も無くはない。






「けどな、嘉山…
おめぇがもし殴られたら、どう倒れる?」



「どうって…
そりゃ膝から前に崩れ落ちるんじゃないですか?」




「ああそうだ。
んじゃその殴られた瞬間の血は、どの辺りに飛び散ると思う?」




「殴り方にもよりますけど…とりあえず足元周辺でしょう」




嘉山が答えると、斉藤は地面に視線を移した。





「遠藤さんの場合も本来、足元に飛び散っているはずだった」



「で、でも…それがない」





斉藤はクスリと笑った。





「こりゃちょっと面倒な事件だな」




「…」





面倒だと思っているようには見えない。



どこかワクワクとした何かが、その目に映っていた。







「斉藤刑事は…」



「あ?」




斉藤が振り向くと、嘉山は俯いていた。


しかしその澱んだ瞳は、しっかり斉藤をとらえる。





「斉藤刑事は…逃げたりしないんですか?」




「…」




「怖くないんですか…?
逃げたく…ならないんですか?」




「とうの昔に…逃げてやったよ」




「え?」






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