刑事とJK
第98章 根城の裏で笑う者〜後編〜
恭子は自転車通学。
僕は徒歩。
世界が黄昏ていく中、わざわざ彼女を歩かせてまで作ったぎこちない時間。
「学校、楽しい?」
わかっていて、聞いたんだ。
彼女には友達といった友達がいない。
「楽しくない」
無理して“楽しい”と言うような子ではないと思っていたけれど、本当にそうだった。
彼女の顔は心底つまらなさそうで、それでいてどこか、構って欲しそうに見えた。
「何で楽しくないの?」
「…」
彼女の目が語っていた。
知ってるくせに
って。
「嘉山君は、友達たくさんいるね」
「でも、親友は少ないよ」
「それでもいいよ、いるだけ、まし」
目の前にいる見えない誰かに、彼女はしゃべりかけていた。
決して僕の方を見ている訳ではないことに、少し腹が立った。
「僕が恭子の友達になったら、学校楽しい?」
彼女はにっこり微笑んだ。
「ううん、全然」
自転車が、チリチリと音を立てる。
「親友だったら、きっと楽しい」
僕の心臓が、大きく打った。
「じゃあ、親友な」
「今から?」
「うん」
親友で
収まってくれたらいいと
そう思ってた。
「クス、嬉しい…」
たぶん、きっと、無理だ。