刑事とJK
第35章 ひと言だけちょうだい
「…はあ…」
深くため息をついたのは、津森だった
机に片方肘を乗せ、誰もいない医療室を眺める
「…ひどい話よね」
ついつい独り言まで呟いてしまう
何がひどい話なのか
それは斉藤のことであった
津森は頭を垂れた
斉藤に強引にキスをして、
好きだと打ち明け、
返事は何もないまま
もう何ヶ月が過ぎただろう…?
もちろん津森は、
斉藤がゆうひを好きで、付き合ってることは知っていた
それはもう
諦めていた
しかし、それならせめて、自分の告白に対して何か一言だけでも欲しかった
オレは付き合えない
すまねぇ
お前なんかと付き合えるかよ…
何でもいい
どれだけ酷い返事でもいいから、
何か言って欲しい…
もし言ってくれたなら、
自分も踏ん切りがつく気がするから
でも、何もないと…
何も言ってくれないと、
まだどこかで期待してしまう…
突然ひょっこりと現れて、
あたしを慰めてくれるんじゃないだろうか…
なんて、淡い願望を抱いてしまう
…それとも…
「あたしのことなんて…
もう忘れちゃってるのかしらね…」
急に、寒気がした
肩をブルッと震わす
…あたしは、そうね…今寂しいのね…
津森は机に突っ伏した
―――斉藤を初めて見たのは…
いつだったかしら…
そうそう、あたしが医療班員として、
まだまだ未熟だった頃ね…