刑事とJK
第45章 謎のおじさん
『何じゃれあってんの?
斉藤とおじさん、仲いいね』
ゆうひは手を拭きながら
こっちへ戻ってきた
「仲良くねぇ
ってか、なりたくもねぇ」
「酷いなあ斉藤君」
岩崎は苦笑した
「…」
斉藤は立ち上がって、
プラスチック製の長い物差しを取り出した
『?』
「オッサン、ちょっと立ってくれねぇか?」
「ええ~、別にいいけど、何で?」
岩崎も立ち上がった
『…何するの?』
ゆうひは不思議そうな顔をした
「オッサンはここから一歩も動くなよ?」
「何か怖いね」
斉藤は腕を伸ばして物差しを岩崎に向けた
物差しの先は、
ちょうど岩崎に当たらないくらいの位置だ
斉藤は物差しを振り上げて、
そのまま岩崎に向かって振り下ろした
『斉藤!!!』
物差しはヒュンッと空をきったが、
岩崎には当たらなかった
『…あ…』
「スゲーな、ほんとに動かなかったんだな」
斉藤は物差しを手にポンポンと置いた
「斉藤君が動くなって言ったんだろ?」
「物差しとオッサンとの間隔は
1cmもないくらいだった。
普通の人間なら、たとえ動かなかったとしても、
反射的に目ぇくらいは瞑るだろ」
「…」
「オッサンは瞬きすらしなかったな。
物差しが当たらねぇって確信してたんだろ?
角度と距離とを一瞬で計算してよ」
「そんなこと、出来るわけがないじゃあないかっ
むりむり」
岩崎は笑ったが、
斉藤はこれを冗談ですますつもりはない
「実際、あんた今やっただろ?染谷教授」
『え…染谷?』
「…斉藤君って、意地悪なんだね」
岩崎はゆっくりと椅子に腰掛けた