刑事とJK
第56章 夢
4月になると、
もう外は温かくなってきた
時折寒い日もあるが、
過ごしやすい気候であることには違いない
『いい天気♪』
「眠くなるなー…」
斉藤はベンチの上でポケーッとしている
その時、ゆうひの目にあるものがとまった
『…あ…』
「?」
斉藤もそれを見た
一匹の、小さい犬だった
『こ…小犬…!!』
ゆうひは犬に近寄った
すると、犬は驚いて茂みに逃げていった
『ま、待って…!!』
「おいゆうひ…」
ゆうひは犬の後を追いかけた
茂みを掻き分け行くと、
犬は追い詰められたように
木の根本で怯えていた
『小犬…ほら、あたしだよ…』
犬は少しずつ近づいて来るゆうひに向かって
唸る
『大丈夫だよ…?
あたしだよ…小犬…』
そっと手を伸ばした
その瞬間、
手の平に鋭い痛みが走った
『あづっ…!!』
思わず手を引っ込めた
『小犬…どうして…』
手の平が痛い
見ると、血が出ていた
後から後から、
ジンジンと打撲のような痛みがやって来る
『小犬ぅ…』
もう一度、手を伸ばしかけた
が、その手は斉藤に掴まれた
『斉藤っ』
「やめとけ
こいつ、怯えてっから…」
小刻みに震える犬の体
ゆうひに向ける恐怖の目
『…』
ゆうひは手を下ろした
と同時に、
犬はまた別の場所へ逃げて行った