All Arounder
第12章 That's Theft
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「大志…」
大志は黙って斉藤の言葉を聞いていた
「おめぇは、美空のぬいぐるみを取り返そうと思ったのか」
大志は小さく頷く
「確かに、大志は優しい兄ちゃんだ。
美空のために、一生懸命になってやれる
…けどな…」
大志は
裏切られた気分だった
「おめぇがやったことは盗みだ」
大志の目は震え、それでも斉藤の顔を見据えた
「父ちゃん言ったよな、悪いことすんなって。
おめぇは父ちゃんとの約束破ったのか?」
「それなら…こうちゃんだって、みそらのぬいぐるみ盗んだ…」
「大志!!!」
大志は肩をびくつかせ、走って逃げていった
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「確か…この時からかなぁ、大志が斉藤を嫌いになり出したのは…」
ゆうひはため息をつき、ソファーにもたれ掛かった
『それだけで…?』
「大志からしたら、ほんとは斉藤に褒めてほしかったんだろうね。
"妹のために、強いお兄ちゃんになったぞ"って…
それを褒めてもらえることを、少しは期待してたはず」
しかし実際、斉藤の口から出た言葉は
幼い大志には衝撃だった