All Arounder
第12章 That's Theft
「美空は前からそうだけど…
大志も斉藤も、姫ちゃんが来てからよく笑うようになったよ?」
『え…///
う、嘘ですよね…?』
「嘘じゃないって。
ふとした時に見せる顔が、優しくなったし」
そんなお世辞は…
別にいらない
いらないけれど
なぜかとても嬉しかった
「それにさ、大志が笑わせてやろうとしてるなら
笑わせてくれるまで、気長に待っててもいいんじゃない?」
『…』
そうか
焦る必要は、ないのか…
うん、確かにそうかもしれない
気長に待とう
あたしが笑えたその日が
大志とのお別れの日なのだから…
『ありがとう…ございます』
姫は立ち上がり、扉の前まで歩いた
『お休みなさい…』
「お休みなさい、いい夢をね」
この人の言葉や表情は
まるで魔法のようだ
あたしはその夜、心地好く眠りにつけた