All Arounder
第19章 Tell A Lie
「…」
何も言えなかった
言う必要もない
自分はただ、雇われただけなのだから…
姫という依頼人一人に情が湧くようじゃ、一流のAll Arounderなんて夢のまた夢
他の依頼人と同等に
姫を扱って悪いわけがない
「…金は…払えよ」
『…わかってるよ』
向きを変え、車の方へ歩き出す姫の背中を
ただずっと見ていた
姫がこの結果を望むなら
オレは口出ししない…
でも…
何でこんなに
寂しいんかな…?
あっさりとした別れは、もう何度となく経験した
これも、そのうちのひとつなのだ…
「じゃあな…」
誰にも聞こえないように
そう呟いた
オレは
All Arounderだから…