All Arounder
第21章 Forbidden Love
「お客様のお出ましだ」
大志は手をすりながら、扉の方に目をやった
井上もつられて見てみると、立っていたのは中年の男
その服装や、周りに何人か引き連れているのを見る限り、そこそこの金持ちのようだ
「All Arounderは?」
「ここに」
大志は奥の部屋へ男たちを案内し、入っていく
最後に井上が扉を閉め、酒場には姫とマスターだけになった
『…All Arounderって、結構仕事ありますよね?』
姫はレモンティーを啜りながら、マスターに話し掛けた
「ああ。こんなマイナーな仕事だが、頼りにしている人間はたくさんいるからな」
『何を頼みに来るんですか?』
「それこそ何でもだよ。くだらないことから、人の生死に関わることまで…
まぁあいつらは、"殺さない"ことだけはルールとして置いてるけどな」
マスターはカウンターに肘を掛けた
『大志たちは…怖くないのかなぁ…』
「自分自身のことじゃあ、何も怖くないだろうよ。
あるとすれば、大志には家族がいるが、退斗は…」
マスターは口を濁した
「いや、何でもないよ」
『…?』
聞きたかったが、やめておいた
姫はとりあえず、カップに残ったレモンティーを飲み干した
――――――
しばらくすると扉が開き、依頼人を含めて大志と井上も出てきた
「ありがとーございましたー」
二人は適当に依頼人を見送ると、早速カウンターに座り、何やら話しはじめた