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All Arounder

第23章 Affection






『斉藤さん、長い間お邪魔しました…
美空ちゃんと奥さんにも、ありがとうって伝えておいてもらえますか?』



姫は玄関を出る前に、斉藤の方を振り向いて言った



斉藤は優しく微笑んで


「ああ、わかった」


と言い、付け足して「ありがとう」と呟いた



姫はペこりとお辞儀をし、家を出た



そのあとを追うように、大志もドアノブを握った



しかし、ちらっと後ろを振り返る



斉藤と目が合うと「何だよ?」と聞かれた



「何もねぇよ」



こう答えるしかなく、…しかしまだ大志は斉藤の方を見ていた



「…」



「だから何だよ?」




「あのよぉ…」





大志は照れ臭そうに顔を掻く




その癖が自分とそっくりで、斉藤は笑ってしまいそうなのを堪えた











「殴られたとこ、ちゃんと冷やしとけよ?」











大志のその言葉は




今まで悩んでいたこと全てを吹き飛ばしてくれた






「余計なお世話だ。
次会ったときは捕まえてやらぁ」





「逃げきってやる」





ふいに笑みがこぼれた







大志は扉を開け、前に進んだ





外から見えた斉藤の顔は見えなくなり

パタン

と音を立てて扉は閉まった







「…行くか」




『うんっ』




大志の笑顔に応えるように、姫もニコッと笑った



















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