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All Arounder

第28章 My Little Girl






『黒羽っ…黒羽…なんでいなくなるの…
お母さんが…お母さんがあたしを…』




肩を震わせながら、何かを伝えようとする姫を
見ていられなかった




「お嬢様、大丈夫です
落ち着いて下さい…私はここにいますから…」



とにかく背中から、力強く、それでも優しく抱きしめた




『くろ…はぁ…』




とうとうお嬢様は泣いてしまったが
そんなことは構わずに、落ち着くまで抱きしめていた










――――







だいぶ冷静さを取り戻してきたようなので
わけを聞くことにした





「何かあったのですか?」




すると姫はコクコクと頷いた





『…こわい夢…見たの…』




まだジワリと涙が滲むが、姫はグッと我慢した





『オオカミが…追いかけてくるの…
ずっと逃げていたら、黒羽がいたのに…
目がさめたら、いなかったのぉ…』




「お嬢様…」





ただの夢ですよ




そんな一言で片付けてはしまえなかった





「私も、同じような夢を見たことがあります」






真っ暗な世界で



母が追ってくるのです…




ただ俺は怖くて恐くて逃げました




俺には、母が狼だということがわかっていたからです






『黒羽ぁ…』




小さな手は、また俺に

しがみついたのだ





『怖かったよぉ…』





なぜかという、はっきりとした理由は


今でもよくわからない





けれど…










「私は…お嬢様のそばにずっといますよ」










"俺"に気づいてくれたあなたを…



守ってあげたいと




せめて、怖い思いだけでもしないようにと…





切に切に





そう思ったんだ…







―――――――――――

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