All Arounder
第32章 Go Mad
「中学の時は…片っ端から倒していってたな。
そうすることで、自分が1番強ぇって証明できた。
だから…証明できたから、愉しめたんじゃねぇか?」
「今は…?」
「証明なんざしなくても、オレが1番強ぇってわかってんだから
わざわざ喧嘩すんのを愉しむのが、めんどくなってきた」
大志は嬉しそうにニカッと笑った
「んじゃー…姫ちゃんは…?」
「喧嘩がどうこうってことについては、姫は関係ねぇよ」
大志は自信ありげに腕を組んだ
「オレはAll Arounderの
No.1だからな」
「は…はは…」
井上は歯の抜けたような笑い声を出した
「マジ、うぜーな
All ArounderのNo.1は俺だっての」
「あ?
何ならここで勝負してやってもいいぞ?」
「望むところだ、掛かってこいよ」
ガチャ
『喧嘩…すんな』
「すんません…」
「ごめんなさい…」
大志と井上は顔を見合わせた
自然と笑みがこぼれる
「姫ちゃん、ちょいとこっち来て」
『?』
井上に手招きされたので、姫は二人のそばまで歩いた
すると突然、井上は二人を抱きしめたのだ
「えっ、おい…!?」
『退斗、何し…!?』
「お前ら二人とも
大好きだぁああああ!!!」
大志も姫も唖然とした
「よし」と井上が二人を離すと、大志は井上の額に手を当てた
「お前…ほんとに大丈夫か…?やっぱ病院に…」
「俺はいつでも正常だ」
『退斗がおかしくなっちゃった…』
「だから大丈夫だって」
モヤモヤとした突っ掛かりが、取れた気がする
なんか、自分が馬鹿丸出しで…たしかにガキだった
でも…
「やっぱ、仲間がいい」
「びょ…病院行かねぇと!!」
『退斗、しっかりして…!!』
「俺は平気だって何回言えばわかんだよ?」