All Arounder
第38章 My Heart Beating
『うっ…』
思わず鼻を塞いでしまいたくなる
いろんな化学薬品の混ざった匂いが、鼻から頭にかけてをドンッと叩いた
『くしゃい…』
《頑張れ》
幸い、研究室の中には誰もいなかった
姫は早速、お目当ての物を探し始める
《CC5だぞ、CC5》
『わかってるよぉ…』
姫は棚に並べてある薬品を、ひとつひとつ念入りに見ていった
しかしその数は計り知れない
『"Hydro3"、"アポロDDD"…』
あーあ…全然見つかんないや…
あ、でも大志のためだもんね
『これはー…』
「おい」
突然声を掛けられ、姫は肩をびくつかせた
恐る恐る後ろを振り返ると、社員のひとりの男がいた
…見つかった
「もう勤務時間は終わったぞ、何をしている?」
『あー…あのぉ…』
姫は手にしていた薬品を咄嗟に後ろに隠した
男は姫に近づいてくる
「新入社員か?見たことのない顔だなぁ…
…よく見たら、可愛い顔して…」
男の手が姫の腕に触れた
『えーっと…』
「君…良かったらこれから…遅いけど、食事でもどう?」
男はスルリと姫の腰に手を回した
《(何してやがんだこの変態野郎ぉお!!!???)》