All Arounder
第7章 Make Me Smile
「さっき…ほっぺつねってたのは何でだ?」
照れていた姫の表情は一気に曇った
『…見てたの?』
「偶然だ」
『…の…』
姫は大志の目を見た
『…笑いたいの…』
その瞳には
『…やり残したこと…』
黒にも白にも
大志が映っていた
「…じゃあ、笑ってみろよ」
『え…』
「簡単だ
口の端を持ち上げてみろ」
『…』
苦痛を味わっているとしか見えなかった
持ち上げようとする口元は、痙攣したようにプルプルと震え
今にも泣き出しそうな目をしていた
ああ
この女は
本当に、笑えないのだ…
「もういい…」
これ以上見ていたら
こっちがどうにか
なっちまう
『…』
姫は口元を緩め
疲労が、顔に見えた
大志は皿を持って、姫から離れ
部屋を出ようとした
死ぬ前にやり残したこと…
笑うこと
「オレはAll Arounderだ」
立ち止まってそう言った
少し振り向き、姫を見た
「報酬によっちゃあ、どんな仕事も引き受ける」
なんせオレは、
All Arounderだからな