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短編集

第10章 『祖母の夏』

彼女は男の子を見たことがなかった。

でも服装は村の子と同じだった。

彼女はゆっくり立ち上がって、男の子に向き直った。
男の子は瞬きをして彼女の顔を見ていた。

男の子はくりくりとした癖毛で、調えられているわけではないが、可愛らしい髪型だった。

彼女が涙を流しているのを見て男の子は、山の方を指差すとついてこいと目で合図をした。


男の子の行き先はお稲荷さんに向かう階段だった。

彼女は見知らぬ顔だったけれど、男の子が悪いようには思えなくて、ついて歩きはじめた。

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