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遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第3章 運命の邂逅

 もし、父の病状が少しでも良くなる治療法があるというのなら、何でも良いから試してみたい。
 今のままではソギョンは、ただ棒きれのように横たわっているだけだ。医者にかかるだけの経済的ゆとりはなく、薬屋で求めた薬を呑ませている。手脚は麻痺して動かないし、薄い粥を梨花かソルグクに食べさせて貰うだけ、片言すら喋れない。
 梨花は朝晩、ソギョンの固くなった腕や脚をさすり、少しでも動くようにならないかと儚い希望を抱いた。寝たきりになって、ひと月が経過していた。
 蒸し饅頭屋を再開できる見込みはなく、目下のところ、兄の代書屋で得た報酬だけが暮らしを支えていた。商売ができなくなり、梨花に時間ができたことで、昼間に父の世話に専念できるようになったものの、肝心の収入がなしでは、いつまでも悠長に家にもいられない。

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