遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~
第4章 求め合う心
兄の言ったとおり、お屋敷勤めなんか止めておけば良かったとすら思えてきて、余計に意気地のない自分に自己嫌悪を感じる始末である。
井戸端の山茶花が涙の幕の向こうでぼやけた。
駄目、駄目、こんなことで泣いてちゃ。まだ始まったばかりじゃない。
またも自分を叱咤し、じゃが芋を洗おうとする。その時、手にしたじゃが芋が手を滑り、ころころと地面を転がっていった。
「あっ」
思わず声を上げると、梨花は慌ててじゃが芋を追いかける。美貌の娘が転がる芋を追いかけている図―というのはあまり似つかわしくないが、この梨花の外見とはまるで正反対の無邪気さがまた、彼女の魅力の一つともなっているのだ。
漸く気が済んだのか、じゃが芋が止まった。ホッとして転がったじゃが芋を視線で追い、手を伸ばしかける。
井戸端の山茶花が涙の幕の向こうでぼやけた。
駄目、駄目、こんなことで泣いてちゃ。まだ始まったばかりじゃない。
またも自分を叱咤し、じゃが芋を洗おうとする。その時、手にしたじゃが芋が手を滑り、ころころと地面を転がっていった。
「あっ」
思わず声を上げると、梨花は慌ててじゃが芋を追いかける。美貌の娘が転がる芋を追いかけている図―というのはあまり似つかわしくないが、この梨花の外見とはまるで正反対の無邪気さがまた、彼女の魅力の一つともなっているのだ。
漸く気が済んだのか、じゃが芋が止まった。ホッとして転がったじゃが芋を視線で追い、手を伸ばしかける。