遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~
第4章 求め合う心
梨花の眼に入ったのは、まず絹の男性用の靴であった。群青の縁取りを施した白の靴は大きく、この靴の持ち主がかなりの長身であろうことを連想させる。
次いで長い脚、程よい筋肉のついた、すっきりとした体軀。薄紫の上等のパジチョゴリを纏っているその人は、この屋敷の当主の一族、それとも親戚か誰かかもしれない。
視線がひっそりと佇む男性の顔まで達した時、梨花は思わず上げそうになった二度目の声を呑み下した。
「あなたは―」
信じられなかった。そう、今、梨花の前に立つのは、紛れもなくひと月余り前、掏摸から大事な巾着を取り返してくれたあの男だ。
「どうやら君は落とし物をするのが得意なようだね」
男は優しい笑みを見せ、ゆっくりと腰を屈めた。小柄な梨花から見れば、まさに見上げるほどの長身だ。並べば、大人と子どもくらいの差があるだろう。
次いで長い脚、程よい筋肉のついた、すっきりとした体軀。薄紫の上等のパジチョゴリを纏っているその人は、この屋敷の当主の一族、それとも親戚か誰かかもしれない。
視線がひっそりと佇む男性の顔まで達した時、梨花は思わず上げそうになった二度目の声を呑み下した。
「あなたは―」
信じられなかった。そう、今、梨花の前に立つのは、紛れもなくひと月余り前、掏摸から大事な巾着を取り返してくれたあの男だ。
「どうやら君は落とし物をするのが得意なようだね」
男は優しい笑みを見せ、ゆっくりと腰を屈めた。小柄な梨花から見れば、まさに見上げるほどの長身だ。並べば、大人と子どもくらいの差があるだろう。