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遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第4章 求め合う心

「私が誰にも言わないと約束したら、君は引き替えに何をくれる?」
「私―、何も差し上げられるようなものなんて、ないんです。一体、何を差し上げたら良いのか」
 男が更に悪戯を思いついた子どものような顔になった。そのことに、梨花は気づかない。
「それなら、君自身を貰えれば、私はそれで良い」
「私―自身、ですか?」
 訝しげに問う梨花に、男は屈託ない笑みを浮かべた。
「そう、君自身を貰おう。今夜、その君の身体で私を存分に愉しませてくれ」
「ええっ」
 梨花は素っ頓狂な声を出し、茫然とした。
 この男、初めて逢ったときは、世のお坊ちゃん連中とは違う真面目そうな人だと思ったのに。
 初対面とのあまりの印象の違いに愕然とする。

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