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遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第4章 求め合う心

「私は、このお屋敷に上がって、まだほんの少しの新参者です。やっと決まった奉公先ですので、もし、こちらの若さまの大切なお客さまに粗相があったと知られて、暇を出されてしまっては困るのです」
 男が納得したように頷いた。
「道理で、君をこの屋敷で見かけたことがなかったわけだ。ここに来て、どれくらいになるの?」
「まだ五日めです」
「判った。このことは、けして口外しないと約束しよう」
 男がきっぱりと言い、梨花は安堵のあまり涙が出そうになった。
「ありがとう(コマ)ござい(スニ)ます(ダ )」
「それで、君は何をくれる?」
「え―」
 今度は、梨花が予期せぬ言葉に戸惑う番である。

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