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遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第4章 求め合う心

「お、おい。泣かないでくれ。本気で口にしたわけではないのだ。そなたが面白い娘のようだったので、ついからかってみたくなったのだ」
 男はおろおろとおかしいほど取り乱した。次の瞬間、梨花の小柄な身体はふわりと男に抱き取られた。
「は、放して」
 先刻の話のこともあり、梨花は愕き、抵抗する。
「私が悪かった。こんな馬鹿げた冗談は二度と言わないから、機嫌を直して泣くのは止めてくれぬか」
 男は梨花を抱きしめ、幼子をあやすようにトントンと背を撫でる。やがて、その手が背中から上へと移動し、梨花の艶やかな黒髪に触れた。
 まるで母親が愛しむような手つきで、男は梨花の頭を撫でる。梨花はいつしか泣き止み、眼を閉じた。そのまま男の広い胸に頬を押し当てる。

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