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遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第4章 求め合う心

 我が身に何が起こったかまるで把握できていない梨花が漸く現実を認識した時、既に南斗は手を振りながら母家とは別方向へと歩み去ってゆくところであった。
 梨花は、そっと頬に触れてみる。たった今、南斗の唇が触れた、その箇所が何故か熱くなっている。その熱は頬だけにとどまらず、徐々にひろがり、梨花の身体全体を包み込んでゆくようだ。
 井戸端の山茶花は相も変わらず凜とした佇まいを見せている。その眼にも眩しい鮮やかな花の色が今は何故か艶めかしくも清々しくも見えた。

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