遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~
第4章 求め合う心
これは嘘ではない。十年前のあの日、確かにソルグクはそう言った。
―お前が倒れていた橋の袂に、海棠が咲いていた。海棠は俺の好きな花でもあるんだ。倒れているお前があまりに綺麗だったから―、最初は、お前が花の精ではないかと思ってしまったんだよ。
「そうか。そなたにはぴったりの名だ」
南斗は頷き、微笑んだ。
と、母家の方から女中頭の声が聞こえてきた。
「噂をすれば何とやら、だな」
南斗と梨花は顔を見合わせると、微笑む。
「それでは、若さま。私はこれで失礼します」
頭を下げようとすると、ついと手を取られた。
刹那、温かくやわらかなものが頬を掠める。
「そなたに頼んでも、到底きいてくれそうにない。ゆえに、今日は私の方から約束の証を貰おう」
―お前が倒れていた橋の袂に、海棠が咲いていた。海棠は俺の好きな花でもあるんだ。倒れているお前があまりに綺麗だったから―、最初は、お前が花の精ではないかと思ってしまったんだよ。
「そうか。そなたにはぴったりの名だ」
南斗は頷き、微笑んだ。
と、母家の方から女中頭の声が聞こえてきた。
「噂をすれば何とやら、だな」
南斗と梨花は顔を見合わせると、微笑む。
「それでは、若さま。私はこれで失礼します」
頭を下げようとすると、ついと手を取られた。
刹那、温かくやわらかなものが頬を掠める。
「そなたに頼んでも、到底きいてくれそうにない。ゆえに、今日は私の方から約束の証を貰おう」