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遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第4章 求め合う心

「真面目でもなく、不真面目でもない。それでは、一体、私は何なのだ? そなたの話を聞いていると、まるで掴みどころのない男のように聞こえるぞ」
 流石に梨花の身分ではそう直截に言えるものではなかったが、確かに当人の言うとおり、尹南斗という男は茫洋としていて、掴みどころがない。
 穏やかで包み込むようなゆったりとした人柄は、凪いだ大海のようでもある。
 そう、南斗は、まさしく海のような男なのかもしれない。その時、梨花は初めてそう思った。
 海は天候によって様々に姿を変える。快晴の日には、水は蒼く煌めき、波は穏やかに打ち寄せるが、ひとたび嵐となれば、黒く濁った水が逆巻き、一瞬で人の生命を奪い去る怖ろしき荒れ狂う魔物となる。
「フム、若い女人には、私はそのように見えているのかな。それゆえ、この歳になっても、嫁の来手がないのであろうよ」

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