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遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第4章 求め合う心

「こんなことを馬鹿正直に白状してしまうと、折角魅力的だと言ってくれたのに、点数を下げてしまうかもしれないけどね」
 本気とも冗談ともつかない科白に、梨花はただ戸惑うばかりだ。
 南斗と一緒にいると、何だか振り回されてばかりのような気がする。でも、それがちっとも嫌ではなく、むしろ、愉しい。
 梨花も南斗と笑っていたときのことだ、ふいに胸の辺りに強い痛みが襲ってきた。
 いつもの差し込みだ―、梨花は胸を押さえながら身体を折り曲げた。
「どうしたんだ? 海棠、何があった?」
「胸が―」
 梨花は胸を押さえたままの体勢で、しゃがみ込んだ。
「胸が痛むのか? 心ノ臓か?」
「いいえ。心臓ではありません」
 大丈夫ですから。
 梨花は南斗を安心させようと無理に微笑みを浮かべた。

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