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遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第4章 求め合う心

「持病の癪なのです。まだほんの子どもの頃から、たまに起こって。いつもは嘘のように元気なのに、忘れた頃に発作が起こるのです」
「―」
 南斗が息を呑む気配が伝わってきた。
「癪、か。あれはとても苦しいものだね。側で見ている者の方が見ていられないほどだ」
 その科白に、梨花は眼を瞠った。
「若さまのお身内の方にも癪を患っているお方がいらっしゃるのですか?」
「あ、ああ?」
 南斗が突如として我に返ったように眼をまたたかせた。
「いや、人づてに話を聞いたことがあるだけだよ。私の身内に癪を患っている者はおらぬ」
「そうなのですか。それはよろしうございました。たまにしか起こらなくても、差し込みは辛いものですから」
 梨花は頷くと、南斗の手を借りて立ち上がった。

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