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遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第5章 凍れる月~生涯の想い人~

 と、梨花の耳許に生温かい息が吹きかけられた。思わず膚が粟立つような恐怖に囚われる。
「海棠、好きだ」
 その声音には、確かに聞き憶えがあった。この声は―。
 梨花の瞼に、下男の西褸(ソヌ)の顔がありありと浮かび上がる。
 ソヌ、梨花がこの屋敷に来た当初から、執拗に追いかけ回しては口説こうとしている若い下男だ。

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