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遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第5章 凍れる月~生涯の想い人~

 梨花は同室の朋輩たちが皆、寝入っていると思い込んでいたのだが、実は、起きている娘がいたのだ。
 その娘は梨花が厠に行ったものだと信じ切っていた。しかし、一向に帰てこないため、心配になって、別室で寝んでいる年嵩の女中に梨花の不在を告げにいった。
 それで、事が明らかになったのだ。新参の女中不明との報告が南斗にも告げられ、南斗の指示で梨花の手荷物や行李が改められ、この中から、例の走り書きが発見された。
 これはただ事ではないと感じた南斗が走り書きの主のチョンハを呼んで問いただしたところ、チョンハはそのような走り書きには全く身に憶えがないし、今夜、梨花を呼び出してもいないと応える。
 念のため、チョンハに走り書きの内容と同じ文章を書かせてみたが、実際の彼女の筆跡は走り書きほど拙くもなく、全く似ても似つかなかった。

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