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遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第6章 兄の心

―こんなものしか買えなくて、ごめんね。おばさん。
 梨花が申し訳なさそうに謝るのに、女房は涙ぐんだ。
―何を今更、他人行儀なことを言ってるの。海棠はちっちゃなときから、うちの娘とは姉妹のようにして育った仲じゃないか。あんたは私にとっちゃア、娘も同然なんだよ。大切な給金で私にまで土産を買ってくるなんて。あんたみたいな孝行娘はこの国のどこを探したって、いやしない。ありがとうよ、大切にするからね。
 おばさん(ア゛シモニ)は、泣きながら梨花の渡した扇子を宝物のように胸に抱いた。
―それにしても、梨花。好きな男でもできたの?
 その後でいきなり訊かれたときには、流石にドキリとした。
―そんなひとがいるわけないでしょう。突然、何を言い出すかと思ったら、おばさんったら。
 慌ててごまかしたが、おばさんは笑った。

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