遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~
第6章 兄の心
ソルグクが眼を見開いた。
「おっ、どうした。何か言ったか?」
「いやね。何をボウっとしてるの? さては、恋煩いね。ついに、好きな女(ひと)でもできたの
?」
梨花の指摘に、ソルグクの陽に灼けた精悍な貌が朱に染まった。
「ば、馬鹿野郎。俺にそんな女ができるわけねえだろ」
「じゃあ、どうして心ここにあらずなのよ?」
からかうように言ってやると、兄は急にむっつりと黙り込む。
「それとも、私の顔に何かついてる?」
ふざけて言いながらも、十日ほど前にも似たような会話を南斗とした記憶が甦った。
どこにいても南斗のことを思い出し、考えてしまう。今、梨花の心は南斗で一杯だ。
当然、逢いたいと思う気持ちはあったけれど、朝、洗面用の水を運ぶとき以外、南斗と顔を合わせる機会は殆どないと言って良い。
「おっ、どうした。何か言ったか?」
「いやね。何をボウっとしてるの? さては、恋煩いね。ついに、好きな女(ひと)でもできたの
?」
梨花の指摘に、ソルグクの陽に灼けた精悍な貌が朱に染まった。
「ば、馬鹿野郎。俺にそんな女ができるわけねえだろ」
「じゃあ、どうして心ここにあらずなのよ?」
からかうように言ってやると、兄は急にむっつりと黙り込む。
「それとも、私の顔に何かついてる?」
ふざけて言いながらも、十日ほど前にも似たような会話を南斗とした記憶が甦った。
どこにいても南斗のことを思い出し、考えてしまう。今、梨花の心は南斗で一杯だ。
当然、逢いたいと思う気持ちはあったけれど、朝、洗面用の水を運ぶとき以外、南斗と顔を合わせる機会は殆どないと言って良い。