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遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第6章 兄の心

 ソルグクは腕組みをして、梨花を睨みつけてくる。これは、非常にまずい。兄の眼が完全に据わっている。
 梨花は小さな溜息をついた。
「確かにお兄ちゃんの言うとおり、私には結婚を約束した人がいるの。知り合ったのは、みつき
三月前よ」
「三月前ということは、尹さまのお屋敷に奉公に出る前なのか?」
 その話は兄にも意外だったらしい。
「なら、相手の男は、お屋敷の使用人ではないな」
 念を押すように言われ、梨花は曖昧に笑った。
「誰なのかを、どうしても言わなきゃならないの?」
「当たり前だ。兄であり保護者である俺が知らずに済む話じゃない」
 梨花は小さく息を吸い込んだ。やはり、言葉が喉許につかえたようで、なかなか出ない。

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