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遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第6章 兄の心

―この男は馬鹿なのか、それとも神経が麻痺しているのか?
 一瞬、そう思ってしまいそうになったほど、南斗はここまで言われても顔色を変えなかった。
「それでは、今日のところは、これで失礼します。ですが、こちらはお父上に是非、お渡し下さい。薬用人参の中でも、とりわけ滋養強壮に効くといわれている清国渡りの稀少種です。きっと、体力がつくと思いますので」
 ソルグクは、差し出された布包みを力一杯振り払った。
「こんなたいそうな代物を親切ぶって持ってきたのか? 妹に良い格好をしたくて持ってきたのかもしれねえが、前にも言ったとおり、施しを受ける謂われはないんでね」
 南斗は上背のある身体を屈め、地面に落ちた包みを拾った。手で簡単に土埃を払い、黙ってソルグクに差し出す。

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