遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~
第6章 兄の心
「私が迂闊だった。海棠の父上や兄上には、あっさりと認めて貰えると思っていたのだよ。だが、考えてみれば、兄上にとって、そなたは大切なかけがえのない妹だ。兄上からすれば、私は大切な妹を託すには頼りない男に見えるのだろう」
「そんなことはありません」
梨花は消え入るような声で呟いた。
ソルグク自身が、南斗の人柄や能力を高く評価していることは、たった今、兄の口から聞いたばかりなのだ。
しかし、ソルグクが南斗について〝不幸の星を背負っている〟と口走ったとは到底話せるものではなかった。根拠のある話ならともかく、〝胸騒ぎがする〟だなんて抽象的な言葉が南斗を梨花の相手としてふさわしくないとする理由だ―、そんなことを言えるはずがない。
「兄の失礼をお許し下さい。普段は、とても優しくて穏やかな気性の兄なのです」
「そんなことはありません」
梨花は消え入るような声で呟いた。
ソルグク自身が、南斗の人柄や能力を高く評価していることは、たった今、兄の口から聞いたばかりなのだ。
しかし、ソルグクが南斗について〝不幸の星を背負っている〟と口走ったとは到底話せるものではなかった。根拠のある話ならともかく、〝胸騒ぎがする〟だなんて抽象的な言葉が南斗を梨花の相手としてふさわしくないとする理由だ―、そんなことを言えるはずがない。
「兄の失礼をお許し下さい。普段は、とても優しくて穏やかな気性の兄なのです」