遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~
第6章 兄の心
梨花は泣きながら謝った。
「判っているよ。兄上はそなたがとても大切なのだ。兄とは、そういうものだよ、海棠。兄にとって、妹は宝物のようなものなんだ。この世のどんなものからも守ってやりたいと思うほどにね」
その何げないひと言が何故か梨花の心に引っかかった。
尹北斗と夫人の間には、確か南斗一人しかいなかったはずだ。少なくとも、尹氏の屋敷に南斗の妹と呼ばれるお嬢さまは存在しない。ならば、北斗が側室に生ませた娘―異母妹がどこかにいるのだろうか。
「南斗さまには、妹君はいらっしゃるのですか?」
「どうして、そんなことを?」
優しく問う南斗に、梨花は応える。
「何だか今の言葉は、南斗さまご自身の気持ちをおっしゃっているような気がしたのです」
「判っているよ。兄上はそなたがとても大切なのだ。兄とは、そういうものだよ、海棠。兄にとって、妹は宝物のようなものなんだ。この世のどんなものからも守ってやりたいと思うほどにね」
その何げないひと言が何故か梨花の心に引っかかった。
尹北斗と夫人の間には、確か南斗一人しかいなかったはずだ。少なくとも、尹氏の屋敷に南斗の妹と呼ばれるお嬢さまは存在しない。ならば、北斗が側室に生ませた娘―異母妹がどこかにいるのだろうか。
「南斗さまには、妹君はいらっしゃるのですか?」
「どうして、そんなことを?」
優しく問う南斗に、梨花は応える。
「何だか今の言葉は、南斗さまご自身の気持ちをおっしゃっているような気がしたのです」