テキストサイズ

遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第7章 哀しい現実

 ソルグクが茫然として訊ねる。
「その噂については、かすかに記憶があります。でも、まさか、多くの使用人まで犠牲になったとは。屋敷にいた人すべてが亡くなったのですか?」
 はい、と、ジュソンは哀しげに眼を伏せた。
「旦那さま、奥さまはもとより、年端のゆかぬ者から年寄りまで皆殺しでした。辛うじて生命を長らえたのは、三人です」
「その中に、海棠とあなたが入っているのですね」
 ソルグクの問いかけに、ジュソンはしきりに頷く。
「俺はこう考えています。林梨花という少女は十一年前に死んだ。この十一年間、妹は崔海棠として生きてきました。今になって昔の苛酷な現実をあの子に突きつけても、かえって傷つけるだけでしょう」
 その言葉に、ジュソンも首を縦に振った。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ