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遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第7章 哀しい現実

 ジュソンに手を引かれて逃げながらも、ソンジュンは両親の安否が気になって何度も後ろを振り返った。
―父上は母上は? ご無事なのか?
 訊ねた彼に、ジュソンは辛そうに応えたものだ。
―旦那さまと奥さまはもう―。
 ジュソンにしてみれば、到底口にはできなかったのだろう。その表情からも、すべて聞かずとも、既に両親の生存は絶望的なのだと知った。
 黙り込んだソンジュンに、ジュソンは励ますように言った。
―若さま、しっかりなさって下さいまし。ここで若さままでもがあいつらに取っ捕まっちまったら、それこそ、あいつらの思う壺ってもんですよ。若さまが生きておいでの限り、林氏の家門が絶えることはありません。今は家門の存続だけを考えて、ここは忍んで下さい。

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