遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~
第7章 哀しい現実
確かにあの時、海棠は言った。
ソンジュンの妹梨花もまた、物心ついた頃から、持病の癪を患っていた。
―癪、か。あれはとても苦しいものだね。側で見ている者の方が見ていられないほどだ。
―若さまのお身内の方にも癪を患っているお方がいらっしゃるのですか?
―いや、人づてに話を聞いたことがあるだけだよ。私の身内に癪を患っている者はおらぬ。
あの際のやりとり一つを取っても、海棠が梨花であると推測できる判断材料になる。
南斗の中で刻が遡ってゆく。
はるか昔、林家の庭で無邪気に戯れたあの日の光景が鮮烈に甦る。
今、この瞬間、南斗は十三歳の少年に還っていた。
―小花、私の可愛い小花。
彼は七つ下の妹を〝小花〟と呼んでいた。
小さな花のように愛らしかった私の妹。
南斗は頬を熱いものが流れ落ちているのに気づき、初めて自分が泣いていることを知った。
ソンジュンの妹梨花もまた、物心ついた頃から、持病の癪を患っていた。
―癪、か。あれはとても苦しいものだね。側で見ている者の方が見ていられないほどだ。
―若さまのお身内の方にも癪を患っているお方がいらっしゃるのですか?
―いや、人づてに話を聞いたことがあるだけだよ。私の身内に癪を患っている者はおらぬ。
あの際のやりとり一つを取っても、海棠が梨花であると推測できる判断材料になる。
南斗の中で刻が遡ってゆく。
はるか昔、林家の庭で無邪気に戯れたあの日の光景が鮮烈に甦る。
今、この瞬間、南斗は十三歳の少年に還っていた。
―小花、私の可愛い小花。
彼は七つ下の妹を〝小花〟と呼んでいた。
小さな花のように愛らしかった私の妹。
南斗は頬を熱いものが流れ落ちているのに気づき、初めて自分が泣いていることを知った。