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遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第8章 終焉

「ああ、帰ってくるよ。お前が親父をたった一人の親父だと言い切ってくれたように、俺もいつかお前を妹だと言い切ることができるようになろうと思う。そうなった時、必ず帰ってくる」
 うん、うんと、梨花は幾度も頷いた。
「それじゃあ、行ってくる」
「―行ってらっしゃい。道中、気をつけてね」
 ソルグクが背を向ける。
 再びゆっくりと遠ざかってゆく背中に向かって、梨花はずっと手を振り続けた。
 ソルグクの背中が見えなくなった後、梨花は石橋の上にしゃがみ込んだ。
 橋の下を流れる川は今日も変わらない。
 きっと、十一年前も、この川の流れは今と変わらず、さらさらと流れていたのだろう。
 覗き込んだ水面は透明で澄んでいる。その面に、懐かしいひとの面影が映った。

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