遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~
第8章 終焉
十一年前のあの夜、梨花はこの橋の上で生まれ変わった。あの時、自分では気づかなかったけれど、梨花は〝林梨花〟という名をこの川に棄てたのだ。
同じように、離れ離れになった兄ソンジュンもまた、あの夜に〝林ソンジュン〟の名を棄てたのかもしれない。
本来の名を棄て、互いにそれぞれ新しい生活を送り、人生を歩み、そして出逢った。
恐らく出逢うべくして、自分たちは再び出逢ったのだろう。
もう、宿命を恨むまい。彼と出逢った運命を恨み憎めば、彼を愛したことも、彼の存在すべてに意味がなくなってしまう。
梨花が愛した男は〝尹南斗〟としてこの世を去ったのだ。
梨花は袖から月長石のノリゲを取り出した。南斗から婚約の証として贈られたノリゲを彼女はいつも肌身離さず身につけている。
―ありがとう、そして、さようなら、兄上さま。
同じように、離れ離れになった兄ソンジュンもまた、あの夜に〝林ソンジュン〟の名を棄てたのかもしれない。
本来の名を棄て、互いにそれぞれ新しい生活を送り、人生を歩み、そして出逢った。
恐らく出逢うべくして、自分たちは再び出逢ったのだろう。
もう、宿命を恨むまい。彼と出逢った運命を恨み憎めば、彼を愛したことも、彼の存在すべてに意味がなくなってしまう。
梨花が愛した男は〝尹南斗〟としてこの世を去ったのだ。
梨花は袖から月長石のノリゲを取り出した。南斗から婚約の証として贈られたノリゲを彼女はいつも肌身離さず身につけている。
―ありがとう、そして、さようなら、兄上さま。