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遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第8章 終焉

 水面に映った南斗の整った面が少年だった頃の兄ソンジュンに変わる。
―小花、私はそろそろゆくよ。
 幼い日のように、ソンジュンが優しい微笑を浮かべている。
 梨花は瞼の兄にそっと別離を告げた。
 手のひらに握りしめたノリゲを袖に入れ、ゆっくりと立ち上がり元来た方へと橋を渡り戻ってゆく。
 家には、彼女を待つ父がいる。
 橋のたもとの海棠が新緑の匂いを含んだ風の中で愛らしい花を咲かせていた。

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