テキストサイズ

遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第2章 転生

「良かった、気がついたんだねえ」
 女の声が帰こえて、梨花はやっと少年の他に誰か別の者がいることに気づく。
 緩慢な仕種で視線を動かすと、少年の隣に粗末なチマチョゴリを纏った女がいた。年の頃は梨花の母と同じくらいかもしれない。
「お前(ヨ )さん(ボ )、お前さん」
 女は誰かを呼ぶために立ち上がり、部屋を出ていった。
 梨花は改めて自分が今、どこにいるのかを確かめるために注意深く部屋の様子を観察した。
 けして広くはない部屋はがらんとして、荷物らしいものといえば、片隅に置かれた壊れかけた箪笥だけ。
 その部屋の真ん中に薄い夜具が敷かれ、梨花はそこに寝かされているのだった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ