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遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第2章 転生

 そして、我が身は、あの夜、この手で人を殺した。普段から袖に忍ばせている持病の薬は時として怖ろしい猛毒にもなり得る。その薬をひそかに男たちの呑む酒に潜ませたのだ。
 血を吐き、泡を吹き、苦しげにのたうち回っていた男たち。最後には白眼を剥いて大の字になって転がっていた。
 この手で、人を、殺した。
 たとえどのように身分の低い、賤しい者であったとしても、人ひとりの生命は重く、両班であれ、使用人であれ、その重さに軽重はない。
 梨花は物心ついたときから、父成水にそのように言い聞かされて育ってきた。その父の教えを信じ、人の生命は何より尊いものだと思ってきた自分が三人もの人間を殺したのだ。

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