テキストサイズ

遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第2章 転生

「どうも、一度に何もかも訊ねたのがまずかったようだな。雪(ソル)國(グク)、ここはお前に任せる。子どもは子ども同士、ゆっくり話してみてくれ」
 男の声が聞こえ、やがて、扉の静かに閉まる音が続いた。
「―大丈夫か?」
 ややあって、躊躇いがちな声がかけられた。
 漸く少しだけ落ち着きを取り戻し、梨花は大きな黒い瞳を見開き、少年を見つめた。
「これを呑むと良い。気分が少しは落ち着くから」
 差し出されたのは、縁の少し欠けた器だった。茶色の液体が入っている。
 梨花は知らず首を振った。
「い―や。呑まない」
 少年が意外そうに眉をつり上げる、
「もしかして、毒が入っているとか? 疑ってる?」
 何も言えない、言えるはずもなかった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ